鶏に牛刀な感じがしますが、Banach代数の元の正則函数への”代入"の計算法 Holomorphic functional calculus を用いて複素成分の行列に対するCayley-Hamiltonの定理を証明します。

AをBanach代数とする。X\in Aに対して、

\sigma(X):=\{\lambda\in\mathbb{C}:\forall Y\in A\ \ \ Y(\lambda-X)\neq1\ \mathrm{or}\ (\lambda-X)Y\neq 1\}

とする。

\mathcal{O}(\sigma(X))\sigma(X)の近傍で正則な函数に拡張できる\sigma(X)上の函数全体のなす代数を表すと、次の条件をみたす\mathbb{C}代数の準同型 \Phi_X:\mathcal{O}(\sigma(X))\to A がただ一つ存在する。

1.任意の多項式函数fに対して,
\Phi_X(f)=f(X).

2.\sigma(X)の近傍上の正則函数列\{f_n\}fに任意のコンパクト集合上一様収束するとき,
\lim_{n\to\infty}\Phi_X(f_n|_{\sigma(X)})=\Phi_X(f|_{\sigma(X)}).

この\Phi_Xは具体的には次のように表せる。

\Phi_X(f|_{\sigma(X)})=\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\int_{\Gamma}f(z)(z-X)^{-1}dz.

ここで\Gammafの正則域内の閉曲線で\sigma(X)の任意の点の周りの回転数が1になるものである。このような積分をDunford積分という。



以下、M_n(\mathbb{C})で複素成分n次正方行列全体とし、I\in M_n(\mathbb{C})を単位行列、X\in M_n(\mathbb{C})に対して\det XXの行列式、\tilde{X}Xの余因子行列を表す。するとX\tilde{X}=\tilde{X}X=(\det X) Iが成り立つ。

f_X(z):=\det(zI-X)とする。Cayley-Hamiltonの定理は任意のX\in M_n(\mathbb{C})に対してf_X(X)=0となることを主張する定理である。

\sigma(X)の周りを一周する閉曲線を\Gammaとすると

\begin{align}
f_X(X) & =\Phi_X(f_X) \\
& =\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\int_{\Gamma}\{\det(zI-X)\}(zI-X)^{-1}dz \\
& =\frac{1}{2\pi\sqrt{-1}}\int_{\Gamma}\widetilde{(zI-X)}dz
\end{align}.

\widetilde{(zI-X)}の成分はzI-Xの成分の多項式で表されるのでzについて正則である。したがってf_X(X)=0となる。